巴里謳歌
2008年07月12日
この日は友人と一緒にルーヴル美術館(外観だけ)、チュイルリー庭園、コンコルド広場、凱旋門、モンマルトルの丘、そしてエッフェル塔と、昨日に続いてパリの主要な名所を廻った。
最初に行ったルーヴル美術館は、館内には入らなかったが、中庭のガラスのピラミッドはしっかり見ることができた。
実はこのピラミッドができた当時は反対した人も相当いたらしいけれど、その気持ちはよく分かる。もしこのピラミッドと周りの現代的な噴水がなければ、この空間は18世紀のまま止まりつづけることができたのだろう。
しかし実際にルーヴルへ来て感じたのは、このピラミッドが生きているのは、18世紀の空間にどんと置かれているからなのではないだろうか、ということだった。周りが無機質な現代のオフィスビルでは、斬新さもクソもないような気もする。
仮にボクの「美学」があるとするならば、現代的なピラミッドそのものが素晴らしいのではなくて、近世と現代のコントラストが美しいのだ、と主張したい。
革命記念日を翌々日に控えているとあって、コンコルド広場から凱旋門までのシャンゼリゼ大通りはトラックが公衆便所を運んでいたり、警察がガードを設置していたり、落ち着かない様子である。
コンコルド広場にはすでにアリーナが設置されていて、大量の三色旗がはためいている。そういえば日本には、「国民」によって作られた出来事を記念した祝日はないような気がする。
小学生の頃、「建国記念の日」という祝日は幕府を打倒した明治維新を祝う日だとずっと思っていたのだが。
モンマルトルの丘にやってきた。地下鉄の駅を出たら丘へと続く道はもう人で溢れかえっている。
正面に白亜の教会、そう、サクレ・クーレ寺院が目に入った。こんな高い所にあるのかと心の中で少し驚いた。
丘と言っても、しょせん日本の街にもあるような盛り土程度だろうと内心思っていた。
満員のケーブルカーに乗って、サクレ・クール寺院の前に着く。
振り返るとパリの街が一望できた。平原に果てしなく市街地が広がっているといった感じである。
「コンクリート建」の建物が目立つという、日本ではおよそ考えられない市街地風景。
30年くらい時代が戻ったかのような感覚に陥った。
フランスの文化遺産・景観行政は徹底していることがここからも垣間見える。
サクレ・クール寺院の内部を見学した後、程なくして画家が集まっていることで有名なテルトル広場にやって来た。友達に勧められ、パリのお土産として自分の似顔絵を描いてもらうことにした。
ちなみにここでは画家を探す必要はない。手の空いた画家が執拗に呼び込みをしているのである。
何人かの勧誘を断って、どのくらいが相場なのかと友人と相談していると、髭の伸びきった仙人のような画家が勧誘してきた。
彼はフランス語で30ユーロで、と言った。
ドイツ語で友人がボクに説明していると、画家は”Kommen Sie bitte, Wie viel wollen Sie?”(来てくださいよ、どのくらいがいいの?)と突然ドイツ語で話してきた。相場が分からない。
しかし30ユーロは高いと思った。20ユーロで何とかならないかと交渉したら、「喜んで」と受け入れてくれた。
モデルになること約20分。通りがかりの観光客の視線が気になる。首も痛い。しかし自分の肖像画を見るのは楽しみである。
描き終わると、画家はこっくりと頷き、ボクに肖像画を見せた。確かに自分である。
恥ずかしくてしかも退屈だったが、いいお土産になった。
さきに書いたようにモンマルトルには観光客が多い。けれど、一歩道を外れると、静寂に満ちた、いわゆる「古き良き時代」のパリに会うことができる。こんな雰囲気の中でかつてはユトリロやモディリアーニが生活し、そして今も多くの無名画家が暮らしているのだろうか…。
さて、夕方7時前、今日の最後の目的地、エッフェル塔にたどり着いた。
ここも例外なく観光客が多い。地上の入口で待つこと実に2時間。
この時の退屈さと言ったら。途中で後ろの親子連れがドイツ人だと分かり、暇つぶしにいろいろ話したけれども、女の子ももう疲れ切ってしまった様子だった。
最上階に上った頃はまだ9時過ぎなのでパリの街は夜景ではない。
あいにくの空。夕焼けが綺麗なわけでもない。
「ロマンチック」さは別に必要ないけれど、もう少し何か言葉が出ないような感動か恐怖感が欲しかった気がする。
ちなみに最上階ではシャンパンが一杯10ユーロで売られている。いくらなんでも高すぎる。
エッフェル塔がライトアップされるのは夜の10時。ライトアップされた瞬間、地上からものすごい歓声が聞こえた。
一瞬、何が起こったのだろうかとパニックになってしまった。
夕食は昨日に続いてサン・ミッシェルのレストラン。
しかしオーストリアやドイツに比べると、値段の割に料理の質はやっぱり高い。
いわゆるカルチャーショックからくるパリ症候群なんて病気があるらしいが、パリは料理だけは期待を裏切らない、ということは言えそうだ。
Posted by migu9 at 12:00│Comments(0)
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